最終更新日:2024年9月26日
北京語と広東語の違いを徹底解説! 挨拶表現や漢字の読み方の違いを比較
中国 (中華人民共和国) を大きく4つの地域に分けると、華北・華東・華南・華中に区分され、各エリアで話し言葉や書き言葉、方言や表現にも微妙な違いがあります。中国語には地域ごとに複数の種類があるため、異なる地域の方が会話やメールのやりとりをする場合に、コミュニケーションがとりづらくなることもあります。
そこで、この記事では中国語でもっともポピュラーな言語である北京語と広東語の特徴についてご紹介します。各言語特有の挨拶言葉・発音・漢字の使い方の違いを比較してみました。北京語・広東語を本格的に学びたい方や、中国への海外進出を検討している企業、中国語翻訳に特化した翻訳会社をお探しの方はぜひ参考にしてみて下さい。
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目次
中国語で北京語・広東語の概要
日本の全国各地でさまざまな方言があるのと同様に、中国 (中華人民共和国) にも各エリア独自の言語があります。その中で代表的な北京語と広東語に着目して、各言語の概要について解説します。
中国語で北京語とはどんな言語か
北京語とは中国語の方言の一種であり、北京周辺の地域で日常的に使われている言語です。北京語は北京市をはじめとする中国本土やシンガポール、台湾 (中華民国) などの国や地域で母国語として使われています。
北京語の主な特徴として、巻き舌をこまめに使う「アル化音」の発音が多く、中国語の他の言語と比較すると、会話のスピードが全体的に速いことが挙げられます。
中国語で広東語の特徴は?
広東語は中国大陸本土の南部の地域 (広東省の広州市など)・香港・マカオで日常的に使われている中国語の方言です。中国では広東語を別の言葉で「粤語 (えつご) 」「広州語」と呼ぶこともあります。
清の時代からイギリスなどの西洋諸国との貿易が盛んだった影響もあり、英語から借用された単語が多いのが、広東語の大きな特徴のひとつです。
マカオでも広東語が使われていますが、16世紀後半から約200年間の長きに渡って、ポルトガルに統治されていた背景があります。そのため、マカオで使われている広東語ではポルトガル語からの借用語が少し含まれています。
中国語の普通語 (標準語) とは
中華人民共和国の政府で中国語の共通語として定められた言語のことを標準語、または普通語と言います。中国大陸本土の各言語では北京語がもっとも標準語に近いものとなっています。
一般的に、中国の学校の教科書や公的な文書、外国人向けの語学テキストには標準語 (普通語) が使われています。
中国語で北京語と広東語の違いを徹底比較
中国語を母国語・主言語とする国は中国大陸本土をはじめ、台湾・シンガポールなど、約14億7,700人もの人が日常的に使っています。その中でもっともよく使われている北京語と広東語に着目して、それぞれの特徴の違いを徹底的に比較してみました。
北京語と広東語の決定的な違いは、主に以下の通りです。
- 声調の違い
- 発音や漢字の読み方の違い
- 会話や文章の読み書きで使う文字の違い (簡体字・繁体字)
- 文章や会話で使われる言い回しや漢字の違い
- 文法の違い
- 北京語・広東語を使う人口や対応エリアの違い
上記の各項目について以下の通り、詳しく解説します。
声調の違い
北京語と広東語では、それぞれの声調のタイプにも違いがあります。中国語の発音で声調とは、声の高低のことを指しています。
日本語での会話だと声の高低や抑揚がほとんどありませんが、中国語には声の高低や抑揚がはっきりしています。
北京語の声調はもっとも声の高い順に、第一声から第四声まで4つの種類に区分されています。第一声は平らかで高いイントネーションで発音し、第二声は上がり調子の抑揚、第三声は低めに平らかな感じの発音、第四声は下がり調子のイントネーションです。
一方、広東語では9種類もの声調があり、北京語と比較するとイントネーションの微妙な違いが見られます。声調が多いことから、北京語よりも広東語で会話している人の方が、表現力が豊かな雰囲気に見られることもあります。
北京語と広東語の発音と漢字の読み方の違いを比較
北京語と広東語を比較すると、それぞれ発音の仕方や漢字の読み方には大きな違いがあります。漢字の読み方と発音について、具体的な事例を挙げると、北京語・広東語で「日本」を表す漢字は同じですが、北京語では「リーベン」、広東語では「ヤップン」と読みます。
0から10までの数字の読み方の違いを比較
次に北京語と広東語の数字の読み方と漢字の表記について比較してみましょう。基本的に双方とも日本語の漢字と同じように表記します。
日本語の漢数字 | 〇 (ゼロ) | 一 | 二 | 三 | 四 | 五 | 六 | 七 | 八 | 九 | 十 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北京語の読み方 | リン líng |
イー / ヤオ yī / yāo |
アァ èr |
サン sān |
スー sì |
ゥウ wǔ |
リゥ liù |
チー qī |
バー bā |
ジウ jiǔ |
シー shí |
広東語の読み方 | リン/レン lihng / leng |
ヤッ (ト) yat |
イー yih |
サーム saam |
セイ sei |
ンー ngh |
ロッ (ク) luhk |
チャッ(トゥ) chat |
バッ(トゥ) baat |
ガゥ gau |
サッ (プ) sahp |
※( )内のカタカナは小さく発音する
※カタカナの下のアルファベットは中国語のローマ字による表記 (ピンイン) による発音記号
北京語で漢数字の「一」(イチ) の読み方は、上記の通り「イー」と「ヤオ」の2通りがあります。通常は「イー」と読みますが、部屋番号や電話番号など、特定の番号を正確に相手に伝える必要がある場合には、「イー」ではなく「ヤオ」と発音します。
「イー」と発音してももちろん通じますが、「七」を表す「チー」と聞き間違えられる場合があるため、「ヤオ」を使うのが一般的です。「一」(イチ) の読み方をその時の状況に応じて、適宜使い分けることで相手に正確に伝わり、番号間違いによるさまざまなトラブルを防ぐことができます。
会話や文章の読み書きで使う文字の違い (簡体字・繁体字)
北京語と広東語では日常的な会話や、文章の読み書きで使う文字にそれぞれ違いがあります。中国語では簡体字・繁体字の2種類の字体が存在しており、北京語では簡体字、広東語では繁体字が使われています。それぞれの文字の特徴の違いは以下の通りです。
簡体字とは
中国語の字体で簡体字とは、1949年に中華人民共和国が建国されて以来、文字改革によって誕生した文字体系です。これまで長年に渡って使われてきた漢字が、文字改革によって簡略化された字体となりました。
簡体字が使われている国や地域は北京市をはじめとする中国大陸本土・マレーシア・シンガポールです。簡体字の使用人口は約14億人で、中国語の教科書や外国人向けの中国語の語学テキストには簡体字が使われているものが多いです。
繁体字とは
中国語の広東語では繁体字が主流となっています。繁体字は、簡体字と比較すると漢字の画数が多く、複雑になっているのが大きな特徴です。
繁体字が使われているのは中国大陸本土では広東省などの一部の地域です。香港・マカオ・台湾などの国や地域で繁体語が使われており、使用人口は約3,000万人です。
文章や会話で使われる言い回しや漢字の意味の違い
北京語と広東語を比較すると、文章や会話で使われる言い回しや、漢字の使い方・表現にもそれぞれ大きな違いがあります。
意味 (文法) | 北京語の漢字表現 | 広東語の漢字表現 |
---|---|---|
~ではない (「否定」の意味を持つ副詞) |
不 | 唔 |
~していない / ない (未完了であることを表す動詞 / 存在を表す形容詞) |
沒 | 冇 |
何 (疑問詞) | 什麼 / 甚麼 /什么) | 乜 |
少量 (量詞) | 些 /點 /点 | 啲 |
美しい / きれいだ (形容詞) | 美 / 漂亮 | 靚 |
文法の違い
中国語で北京語と広東語では、文法上でもさまざまな違いが見られます。
語順の違いを比較
まずは北京語と広東語の語順の並び方について見ていきましょう。文章の基本的な流れで見ていくと、北京語と広東語では主語が文章の先頭に来ます。
「お先に失礼します」「先に行きます」という挨拶表現は、北京語では「我先走了」と漢字で表記しますが、広東語では「我走先了」と表記します。文章の先頭の「我」と文末の「了」の位置は双方とも同じですが、北京語では「我」の後に「先」「走」、広東語では「走」「先」の順になっています。
現在進行形を表す文法の違い
北京語と広東語を比較すると、現在進行形の文法にもそれぞれ違いがあります。北京語の現在進行形では、主に「正」「在」「呢」の漢字がよく使われています。「ちょうど (今) ~ をしているところだ」という意味の文章では、この3つの漢字を使って「正在 ~ 呢」の文法で表現するのが北京語の特徴のひとつです。
この文法を使って「私は今、食事をしているところだ」との意味の日本語の文章を北京語に翻訳すると、「我 (正) 在吃饭。」という訳文になります。
一方、広東語では「正在 ~ 呢」といった文法を使わない代わりに、動詞の後に「緊」の漢字を使うことによって現在進行形を表します。「私は今、食事をしているところだ」という意味の文章を広東語では「我食緊飯。」と表記します。
ここで紹介したのはごく一例に過ぎませんが、文法・漢字・語彙・語順など、北京語と広東語ではさまざまな違いがあることを理解していただけましたでしょうか。
北京語・広東語を使う人口や対応エリアの違い
北京語・広東語を使う人口・対応エリア・使用する文字 (字体) は以下の通りです。
比較する項目 | 北京語 | 広東語 |
---|---|---|
対応エリア | 中国本土大陸・マレーシア・ シンガポール・台湾など |
広東省・香港・マカオなど |
使用人口 | 約14億人 | 約3,000万人 |
使用する文字 (字体) | 簡体語 | 繁体語 |
北京語と広東語の歴史の違いを比較
ここでは中国語で北京語と広東語の歴史・起源・ルーツについて見ていきます。
北京語の歴史・起源
中国 (中華人民共和国) の北京で使われている北京語の歴史は、紀元前770年頃の春秋戦国時代にまで遡ります。その後の秦・漢時代には北京は「北平」として大運河の起点となり、17世紀以降の清朝時代より中国の首都となりました。
北京には中国全土から多くの人々が集まるようになりましたが、長期間に渡って北方民族(漢民族・満州族・モンゴル民族など) によって支配されていました。その関係もあって、北京語の文法では北方民族が使っていた言語の影響が見られます。20世紀前半には中華民国の成立によって国の言語を統一する動きが高まったことから、北京語が採用されました。
ただし、台湾 (中華民国) で使われる北京語は、中国 (中華人民共和国) で使われる北京語と比較すると、発音や語彙に微妙な違いがあります。台湾で使われる北京語や標準語のことを台湾華語、または台湾国語・台湾語と呼ばれています。
広東語の歴史とルーツ
広東語は古代中国時代の言語から直接的に派生した言語ではなく、古代中国王朝時代に中原地区で使われていた言葉がルーツであるとされています。
秦漢時代には広西・広東の地域に広められ、その後は原住民である南越族の人々が日常的に使っていた言葉との融合によって、広東語が定着するようになりました。
中国の最後の王朝である清朝時代の半ば18世紀後半から、広東語を使っていた広州の地域では西洋諸国との貿易が盛んになりました。現代では香港やマカオ、華僑の人々の間では日常的に使われる言語となっています。
※「華僑」とは中国大陸本土で出生して、後に海外に移住した人やその子孫の総称
北京語と広東語の挨拶表現を徹底比較
北京語や広東語を1から学びたい方や、今後は現地に旅行や出張で行く機会のある方は、基本的な挨拶表現をマスターしておくと良いでしょう。
日常的な会話はできなくても、基本的な挨拶の言葉を積極的に使うことで親近感が湧いて、現地の人々にも良い印象を与えることができます。北京語と広東語の挨拶表現を一覧表にまとめたので、参考にしてみて下さい。
日本語の挨拶表現 / 言語 | 北京語の挨拶表現 | 広東語の挨拶表現 |
---|---|---|
ありがとう | 謝謝(シエシエ) | 多謝(ドーゼー)/ 唔該(ン・ゴーイ) |
どういたしまして | 不客气 (ブー・カー・チ) | 唔駛多謝(ン・サイ・ドーチェ)/ 唔駛唔該(ン・サイ・ン・ゴーイ) |
おはよう | 早(ザオ) / 早安(ザオアン)/ 早上好(ザオ シャン ハウ) |
早晨(ヂョウ・サン) |
こんにちは | 你好 (ニーハオ) / 大家好 (ダージアハオ) | 你好(ネイ・ホウ) |
さようなら・バイバイ | 再见(ザイジエン)/ 拜拜(バイバイ) | 拝拝(バイバイ)/ 再見(ヂョイ・ギン) |
すみません・ごめんなさい | 对不起(ドゥイブチー)/ 不好意思(ブーハオ イース―) |
唔好意思(モウ・イー・シー)/ 對唔住(ドイ・ム・ヂュー) |
おやすみなさい | 晚安(ワンアン) | 早抖(ジョウタオ)/ 晚安(ワンアン) |
はい | 是 (シー) | 係(ハイ) |
いいえ | 不是 (ブーシー) | 唔係(ン・ハイ) |
北京語で「おはよう」を意味する「早 (ザオ)」は親しい間柄の人の会話でよく使われるカジュアルな表現、「大家好 (ダージアハオ)」は相手が複数人いる場合に使う表現で、「みなさん こんにちは」という意味です。
広東語で「你好(ネイ・ホウ)」は「はじめまして」という意味もあります。朝昼夜の時間帯に関係なく使える挨拶表現です。
「さようなら」の挨拶では年下や同い年の人など、相手が親しい間柄の人には「拜拜(バイバイ)」を使うのが一般的です。「對唔住(ドイ・ム・ヂュー)」は丁寧できちんとした謝罪の表現です。「唔好意思(モウ・イー・シー)」には「失礼します」という意味もあります。
北京語の「再见(ザイジエン)」と広東語の「再見(ヂョイ・ギン)」には、「また会いましょう」という意味もあります。
北京語と広東語の違いに関する4つのよくある質問 (FAQ)
北京語は標準語と同じ?
中国で使われる言語の中で「北京語はもっとも標準語に近い」と言われていますが、厳密に言えば北京語は標準語ではありません。中国の国土は広大で多彩な民族が共存しており、会話や文章表現では各エリアでさまざまな違いがあります。
北京語では独特の言い回しや言葉があり、標準語と比較すると会話のスピードが速く、巻き舌による発音が多いといった特徴があります。
一方、中国語の標準語は、中国 (中華人民共和国) の人々が共通語として使われている言語です。
北京語と広東語はどちらが難易度が高い? どっちがおすすめ?
普段から北京語を使う人には広東語を習得するのは難しく、広東語を日常的に使う人から見れば北京語を理解するのは容易ではありません。そのため、北京語と広東語を比較して、どちらが難しいとは明言できません。
発音の高低による声調で比較すると、北京語は4種類ですが、広東語は9種類もあります。広東語では例外的な文法がいくつかありますが、北京語の方がシンプルで覚えやすいです。中国語を初めて学ぶ人には、標準語に近い北京語の方がおすすめです。
北京語・広東語の語学力を上達させるには?
北京語・広東語の学習に限らず、語学力を上達させるには、以下の通り4つの力をしっかりと身に付けることが肝心です。
- 単語や文章を読む練習をする【リーディング・読む力】
- 単語や文章を書く練習をする【ライティング・書く力】
- 会話を聴く練習をする【ヒアリング・聴く力】
- 会話のやりとりをする【トーキング・話す力】
北京語や広東語を話せる人と積極的に会話をする・メールのやりとり・本を読む・ドラマや映画を見る・音楽を聴くなど、実践的に学ぶと良いでしょう。
北京語・広東語の中国語翻訳を依頼する際のポイントは?
北京語・広東語の中国語翻訳を依頼する際の主な着眼点は以下の通りです。
- 簡体字・繁体字の双方に対応できる翻訳会社を選ぶ
- 北京語・広東語の中国語翻訳の実績が高い会社を選ぶ
- 依頼する分野に精通した翻訳者が在籍する会社を選ぶ
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北京語と広東語の違いを徹底解説! 挨拶表現や漢字の読み方の違いを比較 まとめ
この記事では中国語で北京語と広東語についてそれぞれの特徴の違いに着目して、挨拶表現・文法・使われる文字 (字体) ・漢字の使い方や読み方など、さまざまな観点から比較してみました。
「北京語や広東語は難しい」といった先入観を持つ人もいるようですが、日本国内の各地域でさまざまな方言があるのと同じで、中国でもエリアごとに独特の言い回しや方言があります。
北京語をはじめとする中国語の使用人口は世界中で14億人にも達しており、使用人口は世界の公用語である英語に次いで2番目となっています。北京語や広東語を母国語としている外国人が旅行や出張の目的で日本を訪れる機会も増えており、中国語は今やわたしたち日本人にとっても身近でメジャーな海外言語となっています。
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